ガザの学術崩壊に希望の光:仮設大学が学問の再開を支援
ガザ地区では、イスラエルによる破壊的な軍事作戦により、大学などの学術機関が甚大な被害を受け、多くの学生が教育の機会を失っている。これまでの学園生活は崩壊し、多くの大学はオンライン学習に頼らざるを得ない状況にあるが、食料、水、電力、インターネットといった基本的な生活資源すら確保が困難な中で、学業を続けることは大きな特権となっている。
このような混乱の中、ガザ南部ハニーン地区のアル=マワシという密集地域で、新たな希望の兆しが見えている。米国非政府組織「Scholars Without Borders」が「University City(大学都市)」と名付けた仮設の学術空間を設立した。この施設は、木材や金属板など現地調達の資材を用いて建設され、かつてのガザの学術生活を模した簡素な再建の場となっている。
同組織の代表者であるハムザ・アブ・ダッカ氏によると、この大学都市は複数の学術機関に奉仕するよう設計されており、6つのホールを設置し、1日あたり最大600名の学生を収容可能である。太陽光発電によるインターネットアクセスや、学生の自立を促すための小規模ビジネスインキュベーターも備えられている。運営はローテーション制を採用し、各日を異なる学術機関に割り当てることで、限られたスペースを最大限に活用している。
ガザの著名な大学(イスラム大学やアル=アズハル大学など)やパレスチナ看護大学などの専門学校がこの施設を利用し、特に実習や議論を伴う対面授業が優先されている。学生たちは、この場所が「本物の大学のような感覚」を与えてくれると感動を表明している。例えば、ラファから避難してきた看護学生のマリアム・ナスルさん(20歳)は、この対面での学びが、それまで経験できなかった貴重な機会だと語っている。
しかし、この取り組みの背景には、ガザの学術部門が「学問的虐殺(scholasticide)」と評されるほどの深刻な被害を受けているという重い現実がある。2023年10月の戦争開始以来、ガザ全土の大学は組織的に破壊・機能停止に追い込まれ、専門家は7,000人以上の学生や学者が死傷し、60以上の大学施設が完全に破壊されたと報告している。学生たちは生存を生きること自体が課題となり、学業を中断せざるを得なかった。この大学都市は、その中で「正常性」を取り戻そうとする、人々の強い意志の表れと言える。
背景
2023年10月にイスラエルがガザ地区での軍事作戦を開始して以来、ガザのインフラ、特に教育機関は甚大な被害を受け、学術活動はほぼ停止した。このニュースは、その崩壊した状況下で、教育の継続という観点から、現地NGOが独自に設営した「仮設の学術空間」の活動を報じている。
重要用語解説
- 学問的虐殺(scholasticide): 教育機関や学術活動そのものを標的とした、体系的かつ組織的な破壊行為を指す。ガザの大学被害を指す専門用語として用いられている。
- University City: 米国NGO「Scholars Without Borders」がガザ南部ハニーン地区に設立した、木材や現地資材を用いた仮設の学術複合施設。対面授業の場を提供している。
- ローテーション制: 限られた資源(施設、設備など)を複数の利用主体(大学など)で共有するため、利用する日や時間を順番に割り当てる運用システムを指す。効率的な資源配分を可能にしている。
今後の影響
この仮設大学は、ガザの学生たちに「正常な学園生活」という精神的な支えと、実習を伴う教育の機会を提供している。しかし、恒久的な解決策ではなく、イスラエルの封鎖と破壊の現実が根底にあるため、教育の継続にはさらなる国際的な支援と、人道的なアクセス改善が不可欠である。今後の展開は、国際社会の介入と支援の規模に左右される。