「オバケ調査」で事故物件の価値を回復:家賃値下げに頼らない新たな再生モデルを確立
本記事は、不動産業界の課題である「事故物件」の価値低下に対し、新たな再生モデルを提案するカチモードの児玉和俊氏の取り組みを紹介している。事故物件とは、過去に室内で他殺、自殺、火災などの事件・事故が発生し、前の居住者が亡くなった物件を指し、一般的に入居者確保のため家賃を2〜3割引き下げるのが常態化している。
児玉氏は、不動産会社での15年の経験を活かし、2022年に同社を設立。その核となるのが「オバケ調査」というサービスである。この調査は、事故物件のオーナーや管理会社から依頼を受け、物件の室内や周辺環境を徹底的に調査し、物件価値の回復を目指す。調査の範囲は、事故の状況や特殊清掃の内容確認に加え、郵便受けやゴミ置き場などの共用部分、さらには送電線による雑音やアマチュア無線使用状況、不審者の有無といった周辺環境要因まで広範囲に及ぶ。
調査プロセスでは、児玉氏が当該物件に午後10時から午前6時までの8時間、単独で滞在する。この際、ヒアリングで不思議な現象が報告された場合は、一晩かけて原因究明を行う。測定項目は、ビデオカメラによる映像記録、ICレコーダーによる音声記録に加え、電磁波、サーモグラフィー、風力、温度・湿度、大気圧、騒音の計8項目に及ぶ。この手法は、英国の城の調査から着想を得て、大学の物理学教授の助言を得て確立された。
収集したデータは社内で精査され、異常の有無が確認される。異常とされる音や映像の多くは、不動産の知見に基づき「家鳴り」などとして説明可能である場合が多い。最終的に、異常が確認されなければ「異常なし」の証明書と調査報告書が発行される。このモデルは、単なる家賃値下げに頼らず、科学的根拠に基づく物件の信頼性回復を可能にしている点が画期的である。
背景
日本の不動産業界では、過去に事件・事故が発生した「事故物件」が、心理的瑕疵として敬遠されがちであり、空室期間の長期化や家賃の大幅な引き下げが常態化していました。この問題に対し、カチモードは科学的調査手法を用いて物件の信頼性を再構築し、市場価値の回復を図っています。
重要用語解説
- 心理的瑕疵: 物件の過去の経緯(事件・事故など)によって生じる、入居者が抱く心理的な抵抗感や嫌悪感のこと。不動産取引において、物件価値を下げる主な要因となる。
- オバケ調査: 単なる超常現象の調査ではなく、科学的・物理的な機材(電磁波、サーモグラフィーなど)を用いて、物件の異常な音や現象の原因を徹底的に究明する専門調査サービス。
- 家鳴り: 建物内の木材や金属が、温度や湿度の変化に伴って膨張・収縮することで発生する、自然な音のこと。事故物件の異常音として誤解されがちだが、科学的に説明がつく現象である。
今後の影響
本モデルが成功すれば、事故物件に対する市場の過度な恐怖や偏見を払拭し、不動産価値の客観的な評価基準を確立する可能性があります。これにより、オーナーや管理会社は家賃値下げに頼らず、物件の真の価値を維持しやすくなり、不動産市場全体の健全化に貢献すると予想されます。