トランプ氏、WSJへの100億ドル提訴を棄却:エプスタイン関連報道を巡る訴訟に判決
米国の連邦裁判所は、ドナルド・トランプ前大統領がウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)およびそのオーナーのルパート・マードック氏を相手取っていた100億ドル規模の名誉毀損訴訟を棄却しました。この訴訟は、トランプ氏とジェフリー・エプスタイン氏との関係、特にエプスタイン氏の50歳の誕生日に関連して署名されたとされる手紙に関するWSJの報道を巡るものでした。
マイアミの連邦地方裁判所判事であるダリン・ゲイルズ氏は、月曜日(記事執筆時点)、「公人」が名誉毀損訴訟においてクリアしなければならない「実際の悪意(actual malice)」の基準を満たしていないと判断しました。この基準とは、単に公的な発言が虚偽であることだけでなく、メディアや発言者がその真偽について無謀な無視(reckless disregard)をもって行動したか、または虚偽であると知るべきであったことを証明する必要があるというものです。
ゲイルズ判事は、「この訴状は、この基準に全く近づいていない。むしろ正反対だ」と指摘しました。さらに、WSJの記者たちが事前にトランプ氏にコメントを求め、その否定的なコメントを掲載していた点を挙げ、読者が自ら結論を出す余地を与えていたため、WSJが「実際の悪意」をもって行動したというトランプ氏の主張に反すると述べました。
トランプ氏は、自身がエプスタイン氏に送ったとされる誕生日のお祝いのメッセージを「偽物」と主張し、名誉毀損による損害賠償として100億ドルを求めていました。WSJの親会社であるニュースコープのダウ・ジョーンズ&カンパニーは、2025年7月17日付の記事の正確性を擁護しています。この判決は、エプスタイン関連ファイルの公開に伴う余波や、トランプ氏が批判的な報道を抑制するために法制度を利用しようとする試みに対する、さらなる打撃となりました。
背景
本件は、トランプ氏が自身の過去の行動やエプスタイン氏との関係が公になったことに対し、メディアによる報道を法的に封じ込めようとした一連の試みの一部です。特に、エプスタイン氏の記録が議会から公開されたことで、トランプ氏の評判が大きく傷つき、訴訟という形で対応を試みました。
重要用語解説
- 実際の悪意(actual malice): 公人に対する名誉毀損訴訟において、単なる虚偽報道以上の、報道機関が真偽を無視した悪意や無謀な無視があったことを証明する、非常に高い法的基準。
- 公人(public figures): 著名人や政治家など、公的な関心が高い人物を指し、名誉毀損訴訟において、一般人よりも高い立証責任を負うとされる。
- WSJ(Wall Street Journal): ウォール・ストリート・ジャーナル。経済・政治分野の報道で知られる、影響力の大きい大手新聞社。
今後の影響
この判決は、メディアの報道の自由と、公人による訴訟を通じた報道規制の限界を示すものです。トランプ氏の法的手段が再び挫折したことで、今後の政治的な論争において、メディアの報道の信頼性がより強調される可能性があります。今後の展開としては、トランプ氏が別の法的手段を模索する可能性が残りますが、報道の自由の原則が強化される結果となりました。