製造業エンジニアが語る「ゴリラ」から「AIゴリラ」へのスキル変遷:15年の現場経験が武器に
本記事は、製造業の現場で15年間「ゴリラ」として活動してきたエンジニアが、AI技術を取り入れ「AIゴリラ」へと進化するまでのキャリア変遷を詳細に記している。筆者は高専時代にはアセンブラやC/C++を用いてPID制御などを行う「技術者の卵」であったが、就職後15年間はプログラミングから離れ、NCプログラム作成、治具設計、そして品質管理(Cpk管理、不良解析)といった「力技」の日々を送った。この期間、筆者はデータ分析の基礎的な感覚や、現場の業務フローを身体で理解する「製造業の身体性」を培った。
転機は、不良データの集計にExcelで数時間かけていた作業を、Pythonのpandasを使うことで10秒で完了できることに気づいた時である。これを機にPythonを独学で再起動し、その後、GASやn8n、Difyといったノーコード/ローコードツールを組み合わせる「部品を組み合わせる」段階へと移行した。さらに、生成AIのAPI(Claude, Geminiなど)を活用することで、営業メールやDMの自動生成、PDFの自動読み取りなど、業務自動化の幅を広げた。
現在の「AIゴリラ」の状態では、コードを直接書くのではなく、Claude CodeなどのAIに指示を出し、AIがコードを生成・実行する「バイブコーディング」を主戦術としている。この経験と現場の知見を組み合わせ、筆者は「数千万円する予知保全ソリューション」を、M5StickC Plus2などの低コストな汎用技術(センサー、FastAPI、Python)で再現するプロダクトを開発している。筆者は、この15年の「ゴリラ期間」こそが、AI時代において「どこをAIで置き換えられるか」という直感的な判断力という形で、最大の財産になっていると結論づけている。
背景
本記事は、製造業という特定の現場環境において、技術者が直面するスキルセットの変遷を追った記録である。かつては専門的なプログラミング知識(アセンブラ、C言語)が求められたが、現場の要求の変化に伴い、データ処理や業務自動化のスキルが重要となり、近年では生成AIの活用が新たな必須スキルとなっている。
重要用語解説
- PID制御: 比例・積分・微分制御の頭文字。システムの状態を目標値に近づけるための制御アルゴリズムであり、ロボットや自動制御システムで広く用いられる。
- Cpk管理: 工程能力指数(Process Capability Index)の略。製造プロセスが要求される品質レベルをどの程度満たしているかを統計的に評価する指標。
- バイブコーディング: AI(特にLLM)に指示を出し、AIがコードを生成・動作確認を行うプロセス。人間が手動でコードを書く工程をAIに委ねる新しい開発手法。
- 影響: 本記事は、製造業のエンジニアリングキャリアパスの再定義を促す。専門知識だけでなく、現場の業務フローを深く理解し、AIやローコードツールを「組み合わせる」能力(システム思考)が、今後の最も重要な競争優位性となることが示唆されている。中小企業での低コストソリューションの可能性も示している。