スター・トレックの通信機が高級腕時計に進化:Hautlenceが「Retrovision ’64」を発表
スイスの高級時計ブランド、Hautlenceが、SFシリーズ『スター・トレック』の象徴的な「通信機(Communicator)」をモチーフとしたハイエンドな腕時計「Retrovision ’64」を発表した。本モデルは、1960年代のSF感を強く意識したデザインが特徴で、カバーや通気孔のようなグリルが、開くと内部の時計機構を露出させるというギミックが組み込まれている。時計の機構自体は、単なるデザインに留まらず、高度な時計技術が投入されている。具体的には、ジュネーブを拠点とする職人時計職人Agenhorと共同開発した、リニアジャンプアワー機構を搭載している。文字盤の下の金属グリルからは、空間通信装置を思わせるように時間が水平に表示され、分針が60に達すると、このリニアディスプレイの時間が次の数字にジャンプする。さらに、サファイアクリスタル中央文字盤には、ダブルヘアスプリングを備えたフライングムーントゥールビヨンが展示されており、これは最大精度と視覚的な魅力を追求した複雑な機械式ムーブメントである。ケース、リューズ、ラグはグレード5チタン製で、銅とブラウンのPVDコーティングが施されている。裏蓋は透かしサファイアケースバックとなっており、D50ムーブメントと72時間のパワーリザーブを確認できる。Hautlenceは、本モデルの目的を「時計製造のメカニズムを視覚的なスペクタクルに変えること」と掲げている。ただし、このモデルは星間連邦が富を超越した社会であるという『スター・トレック』の設定とは矛盾するが、その価格は驚異的な16万5千ドル(約2,500万円以上)に設定されており、製造数はわずか3点に限定される。
背景
『スター・トレック』は、宇宙を舞台にしたSFシリーズであり、そのガジェットやデザインは多くの文化的な影響を与えてきた。高級時計業界においても、SFやポップカルチャーとのコラボレーションは存在したが、本モデルは単なるオマージュに留まらず、高度な機械式時計の機構そのものをデザインに取り入れた点で画期的である。
重要用語解説
- フライングムーントゥールビヨン: 重力の影響を打ち消すため、毎分回転するトゥールビヨン機構。高度な機械式時計の精度と視覚的魅力を高める複雑機構である。
- リニアジャンプアワー機構: 時間を水平に表示し、分針が60に達した際に時間表示が次の数字にジャンプする機構。視覚的なギミックを追求した特殊な時計機構である。
- PVDコーティング: 高級時計やジュエリーで用いられる物理気相成長法によるコーティング。金属に耐久性や特定の色彩(例:ローズゴールド)を付与する技術である。
今後の影響
本モデルは、単なるファンアイテムを超え、時計の機構美を最大限に視覚化した「芸術品」としての価値を持つ。これにより、高級時計市場におけるポップカルチャーとの融合の新たな基準を提示し、コレクターズアイテムとしての需要を刺激する可能性がある。ただし、極めて高額な価格設定が市場の受け入れを左右するだろう。