Ankerが独自開発のAIチップ「Thus」を発表:オーディオ・IoT製品にローカルAIを搭載
Ankerは、自社開発のカスタムシリコンチップ「Thus」を発表しました。これは、オーディオデバイス、モバイルアクセサリー、IoTデバイスにローカルAI機能を組み込むことを目的としています。Thusは、世界初のニューラルネット・コンピュート・イン・メモリAIオーディオチップであり、従来のチップよりも小型で、複雑な計算に必要な電力を大幅に削減できる点が特徴です。
このチップはまず、Soundcoreの今後のフラッグシップイヤホンに搭載される予定です。Ankerは、イヤホンはサイズ制約が最も厳しいデバイスであるため、開発の起点としたと説明しています。従来のイヤホン用AIチップは、限られた電力とスペースの制約から、数万パラメータ程度の小さなニューラルネットワークに頼らざるを得ませんでした。しかし、Thusチップのエネルギー効率の高い「コンピュート・イン・メモリ」設計により、数百万パラメータを処理可能となり、複雑な環境ノイズへの対応能力が飛躍的に向上しました。
これにより、従来の通話ノイズキャンセリングが抱えていた、騒音環境下での音声分離の難しさ(周囲のノイズの漏れや音声の圧縮による聞き取りにくさ)が改善されます。Ankerによると、Thusチップの大型化されたニューラルネットワークに加え、8つのMEMSマイクと2つの骨伝導センサーを組み合わせることで、環境に左右されない、よりクリアな通話音声を実現すると述べています。
具体的な製品としては、リーク情報に基づき、Thusチップを搭載する最初のイヤホンは「Liberty 5 Pro Max」(229.99ドル)と「Liberty 5 Pro」(169.99ドル)となる見込みです。Ankerは、これらのイヤホンに関する詳細な製品情報や、その他のAI搭載機能について、5月21日に開催される「Anker Day」で発表する予定です。
背景
近年、AI技術の進化に伴い、スマートフォンやウェアラブルデバイスなど、小型デバイスへのAI機能搭載が求められています。従来のAIチップは、モデルのパラメータを外部に転送する必要があり、電力消費や遅延が課題でした。AnkerのThusチップは、この課題を「コンピュート・イン・メモリ」という技術で解決しようとしています。
重要用語解説
- コンピュート・イン・メモリ: 計算処理(コンピュート)とデータ記憶(メモリ)を同じ場所に統合した技術。データ転送の必要性を減らし、電力効率と処理速度を大幅に向上させます。
- ニューラルネット: 人間の脳の神経回路を模倣した計算モデル。AIの学習やパターン認識に使用され、音声認識やノイズキャンセリングなどに利用されます。
- MEMS: Micro-Electromechanical Systemsの略。微細な機械構造体を用いたセンサーやアクチュエーターの総称。小型で高感度なマイクなどに利用されます。
今後の影響
本チップの成功は、小型デバイスにおけるAI処理の常識を変える可能性があります。これにより、イヤホンやIoT機器など、バッテリーやサイズが制約となる分野で、これまで不可能だった高度なAI機能(例:複雑な環境認識、リアルタイムの高度なノイズ除去)が実現し、製品の差別化要因となることが予想されます。競合他社との技術競争が激化するでしょう。