元外務官僚が証言:マンデルソン大使任命審査を首相官邸が「軽視」していたと告発
駐米大使任命を巡る問題で、外務省元高官のサー・オリー・ロビンス氏が21日、英下院の外務委員会に出席し、衝撃的な証言を行った。ロビンス氏は、与党・労働党重鎮のピーター・マンデルソン卿の駐米大使任命プロセスにおいて、首相官邸が治安当局による身辺調査を「軽視する姿勢」を取っていたと強く非難した。マンデルソン卿は、昨年1月末の時点で審査に不合格であったにもかかわらず、外務省が審査機関の勧告に反して大使就任を認めた経緯がある。ロビンス氏によると、当時、首相官邸からは「可能な限り一刻も早く」マンデルソン卿をアメリカに赴任させるよう「絶え間ない圧力」がかかっていたという。ロビンス氏は、内閣から「身辺調査を行う必要はない」という立場を示されていたと証言した。一方、首相官邸側は、身辺調査を軽視したとの主張を否定し、任命手続きの進捗報告を求めるのは合理的だったと反論した。マンデルソン卿は2024年12月に就任が発表され、2025年2月10日に正式就任したが、アメリカの性犯罪者ジェフリー・エプスティーン元被告とのつながりが理由で、就任から7カ月後の昨年9月に解任された。この一連の経緯を受け、スターマー首相は「適正な手続きが完全に行われた」と議会で答弁したため、議員から「議会を欺いた」として辞任を求める批判が続いている。ロビンス氏の証言は、政府が隠蔽していたとされる審査の経緯や、首相の対応の適正性について、新たな疑問を投げかけている。
背景
本件は、与党の重鎮であるピーター・マンデルソン卿の駐米大使任命プロセスにおける手続きの適正性を巡る政治的な論争である。マンデルソン卿は、過去に性犯罪者との関係が問題視され、大使を解任された経緯があるため、その任命プロセスは常に批判の的となっている。元外務官僚の証言は、政府の対応の透明性や、首相の責任の所在を問うものとなっている。
重要用語解説
- 身辺調査: 大使などの要職に就く人物に対し、治安当局や専門機関が、過去の経歴や行動、リスクなどを詳細に調査すること。任命の適格性を判断する重要なプロセス。
- 外務委員会: 国会(下院)の常設委員会の一つで、外交政策や外務省の活動を専門的に審議する場。政府の政策や高官の証言が公に議論される。
- UKSV: 英国の安全保障審査局(UK Security Vetting)。政府の機密性の高いポストに就任する人物の適格性を判断するための専門機関。その勧告は極めて重要視される。
今後の影響
ロビンス氏の証言は、政府がこれまで主張してきた「適正な手続きが完了した」という認識を大きく揺るがした。これにより、スターマー首相の政治的信頼性がさらに低下し、今後の内閣の安定性や、政府の外交政策決定プロセス全体の見直しが求められる可能性がある。野党からの不信任動議の動きも活発化する見込みである。