手術の常識を変える「交代制」導入:医師の働き方改革が患者の安全を守る
富山大学附属病院第二外科では、外科医の深刻な人手不足と長時間労働という課題に対し、手術中の「交代制」導入や「完全シフト制」の導入という、従来の医療現場の常識を変える取り組みを進めている。この改革は、外科医不足の危機を背景に、組織として持続可能な医療体制を構築することを目的としている。
具体的には、すい臓がんなどの難易度の高い手術において、執刀医が最後まで担当する従来のスタイルから、複数の医師が役割を分担して手術を行う「交代制」が徹底されている。この「交代制」の導入は、単に医師の負担を軽減するだけでなく、藤井努教授によると、合併症率の低下にも寄与していることが報告されている。
さらに、業務の効率化のため、午前は手術、午後は外来など、勤務時間を細かく切り分ける「完全シフト制」も導入された。これにより、医師たちは過酷な長時間労働から解放され、八木健太医師(10年目)のように、仕事と家庭生活を両立できるようになった。この働き方改革の結果、医局の人数はかつての2倍に増加し、新人医師も着任するなど、組織全体の体制が強化されている。
医師の不足が深刻化し、消化器外科医が過去20年で2割以上減少する中で、富山大学附属病院第二外科は、医師が消耗しない働き方を確立することで、結果的に患者の安全性を高め、医療崩壊を防ぐ新たなモデルを提示している。
背景
近年、日本の医療現場では、外科医の深刻な人手不足と、それに伴う医師の長時間労働が大きな社会問題となっている。特に消化器外科分野では、業務負担の重さが指摘され、医療崩壊の懸念が高まっていた。富山大学附属病院第二外科は、この危機的状況に対応するため、従来の医療慣習を見直し、働き方改革を断行した。
重要用語解説
- 交代制: 手術中に執刀医が交代で担当するシステム。従来の「最後まで同じ医師が担当する」常識を変えることで、医師の負担軽減と、合併症率の低下に貢献している。
- 完全シフト制: 勤務時間を午前・午後など細かく切り分け、業務を分担する制度。医師が過度な長時間労働から解放され、ワークライフバランスの実現を可能にした。
- 消化器外科医: 胃や腸など消化器系の病気や怪我を専門とする外科医。近年、重い業務負担や人手不足により、その数が減少している専門分野である。
今後の影響
この「交代制」や「完全シフト制」の成功事例は、他の医療機関における働き方改革のモデルケースとなり得る。医師の労働環境改善が、単なる福利厚生に留まらず、患者の安全性の向上(合併症率の低下)という具体的な医療成果に直結することを示しており、今後の医療制度改革に大きな影響を与えることが予想される。