トランプ政権が「選挙の公正さ」を維持してきた司法省部門をいかに武器化したか
本記事は、アメリカの司法省(DOJ)に属する投票権部門(Voting Section)が、トランプ政権下でどのように機能不全に陥り、その専門知識が失われつつある状況を報じている。投票権部門は、1965年の画期的な投票権法(Voting Rights Act)の制定以来、半世紀以上にわたり、全米のあらゆる市民が平等に投票する権利を確保する役割を担ってきた。具体的には、全国有権者登録法やアメリカ人投票権法などを執行し、差別的な投票慣行を防ぐために法廷で米国を代表してきた。
筆者は、この部門の専門家であるデビッド・ベッカー氏(David Becker)の経験を交え、この部門がかつて「公民権部門の至宝」と評されていたことを強調している。しかし、過去1年間にわたり、トランプ政権はこの部門を「引き裂いてきた」と指摘されている。その結果、20人以上の経験豊富な弁護士が事実上排除され、代わりにホワイトハウスの計画、すなわち選挙への信頼を損なうことを実行する忠実な支持者たちに置き換えられている。
元DOJ弁護士たちは、この状況に対し深い悲しみと怒りを感じており、特に社会の最も弱い立場の人々のために行われてきた活動が停止していることに危機感を抱いている。ある元弁護士の証言によれば、南部の一つの小さな町で黒人有権者が差別を受けていた事例が挙げられており、DOJの活動によって人種的な多様性が実現した歴史的成果が、今後も維持されるか不安視されている。
さらに、過去12ヶ月にわたり、投票権部門の弁護士たちは、政権側が大量の有権者層の投票を阻止しようとしていると批判する中で、州に対し編集されていない有権者名簿へのアクセスを求めて訴訟を起こしてきた。現時点では裁判所がこれを阻止しているものの、トランプ氏とその支持者たちは、どのような抵抗があってもこれらの政策を推し進める意向が強く、特に11月の期中間選挙を前に、元弁護士たちは強い懸念を抱いている。
背景
投票権部門は、1965年の投票権法制定という公民権運動の歴史的成果に基づき設立された。この部門は、人種や経済的背景にかかわらず、全ての市民が平等に投票できる権利を法的に守護することを目的としてきた。近年、トランプ政権下で、この部門の活動が政権批判と見なされ、その専門性が意図的に弱体化させられているという経緯がある。
重要用語解説
- 投票権部門(Voting Section): 司法省(DOJ)の公民権部門に属する部署。1965年の投票権法以降、アメリカ全土で投票の権利が平等に保障されるよう、差別的な投票慣行の防止に尽力してきた専門部門。
- 投票権法(Voting Rights Act): 1965年に制定された画期的な法律。南部諸州における人種差別的な投票制限を撤廃し、全ての市民に平等な投票権を保障することを目的とした、アメリカの公民権運動における重要な成果。
- DOJ(Department of Justice): アメリカ合衆国司法省。連邦レベルでの法執行、特に公民権や選挙関連の法的な問題を取り扱う主要な政府機関の一つ。
今後の影響
この部門の機能不全は、アメリカの民主主義の根幹、特に投票の公平性に対する信頼を大きく揺るがす。もし政権の意図通りに専門知識が失われれば、歴史的に達成された投票権の保障が後退し、特定の有権者層の投票権が制限されるリスクが高まる。これは、今後の選挙結果や社会の分断に深刻な影響を与える可能性がある。