AI利用と数学力低下でUCバークレーのCSクラスで不合格率が急増
UCバークレーの複数のコンピューターサイエンス(CS)クラスにおいて、2026年春学期に不合格(F)の割合が過去の学期と比較して著しく高いことが判明しました。これは、学生のAIへの過度な依存、数学的な準備不足、そして教員側の人員不足が複合的に影響していると指摘されています。
具体的には、CS 10クラスでは学生の35.3%が、CS 61Aクラスでは10.6%がF評価を受けました。これは、2025年春および2024年春の同じクラスのF評価率が10%を超えなかったのと対照的です。通常、学部下位のコースでは、DやF評価を受ける学生が7%程度が目安とされています。さらに、これらのクラスの平均GPAはC+(2.3)に留まり、理想的な範囲(2.8〜3.3)から大きく逸脱しています。
この異常な高不合格率の主な原因として、ダンのガルシア教授(UCバークレー)は「学術的な不正行為の著しい増加」を挙げています。学生がClaude、ChatGPT、Google Geminiなどの大規模言語モデル(LLM)を利用しすぎることで、不正行為に及んだケース(約30名)や、単にLLMに頼りすぎて試験時に準備ができていないケースが挙げられています。一方、ギリージャ・ラナデ教授は、自身の担当したEECS 127クラス(最適化モデル)でも16.8%という高いF率を確認し、学生が線形代数やベクトル解析といった前提となる数学的スキルを十分に習得していない現状を指摘しました。特に、学生が履修した線形代数クラスが「オープンインターネット、オープンAIポリシー」であったことに驚きを示しています。
これらの問題を受け、ガルシア教授とラナデ教授は、UCシステムにおけるSTEM分野の入学選抜にACTやSATといった標準化テストの再導入を求める請願書に署名しました。また、ラナデ教授は教員不足によるクラス構造の変更(最終プロジェクトの削除)も余儀なくされました。両教授は、AI時代において学生が批判的思考力や分析的思考力を身につけるよう、より多くの指導が必要であると強調し、学生が困難な問題に挑戦する機会を増やすべきだと訴えています。
背景
近年、AI技術の急速な進化に伴い、高等教育機関における学生の学習方法や学力維持に大きな課題が生じています。特に、AIによるレポート作成や課題提出の容易化は、学生の基礎的な思考力や数学的スキルを低下させているという懸念が、主要大学で指摘され始めています。
重要用語解説
- 大規模言語モデル(LLM): ChatGPTやGeminiなど、大量のテキストデータから学習したAIモデル。文章生成や要約、コード作成など、人間が行う知的作業を代替する能力を持つ。
- GPA: Grade Point Averageの略。学生の成績を点数化し、学業成績を総合的に示す指標。高いほど優秀とされる。
- 標準化テスト: ACTやSATなど、特定の能力や知識を測定するために、全国または広範囲の受験生に統一された形式で実施される試験。入学選抜の指標として用いられる。
今後の影響
本件は、AI時代における大学教育のあり方そのものに疑問を投げかけています。単なる知識伝達ではなく、批判的思考力や問題解決能力を重視する教育改革が求められ、大学側は評価基準の見直しや、より実践的な学習機会の提供を迫られるでしょう。また、入学選抜における標準化テストの再評価も加速する可能性があります。