マスク氏、「Xはもう存在しない」と主張しFTCの命令撤回を試みる
イーロン・マスク氏は、2022年にTwitterを買収し「X」に名称変更した企業に関して、アメリカ連邦取引委員会(FTC)が下した過去の和解命令の撤回を求めています。この命令は、Twitterがユーザーから収集した電話番号やメールアドレスといった個人情報を、「セキュリティ上の目的」という名目で集めながらも、実際にはターゲティング広告など不正に利用していた問題に基づいています。
FTCは当初、この個人情報保護の不備を指摘し、Twitterに対し1億5000万ドル(当時のレートで約190億円)の罰金を科すとともに、2042年までデータ保護慣行の監視を続けるという厳しい措置を取りました。マスク氏が買収後、一度は命令の撤回を求めましたが、FTCはコンプライアンス体制の崩壊や従業員への威圧的な態度などを理由にこれを拒否しました。
しかし、マスク氏は2026年5月、新たな請願書を提出し、「この命令はすでに存在しない企業に対して下されたものであり、責任者は全員退社した」と主張することで、FTCの監視体制そのものの無効化を目指しています。彼はまた、XがEU一般データ保護規則(GDPR)を順守するなど、自主的な改善を進めている点を強調し、FTCの命令は言論活動を萎縮させると批判しています。
これに対し、FTCはマスク氏の請願書について2026年7月2日までパブリックコメントを募り、その後決定を下す予定であり、今後の動向が注目されています。
背景
本件は、イーロン・マスク氏によるTwitter買収後のガバナンス問題と、それに関連するFTC(連邦取引委員会)の監視体制に関するものです。当初、Twitterが個人情報保護に欠陥があったとして巨額の罰金と長期的な監視命令が出され、その後、マスク氏の経営方針やコンプライアンス上の行動により、その命令維持自体が争点となっています。
重要用語解説
- FTC(連邦取引委員会): アメリカ合衆国の消費者保護を目的とする政府機関。企業が公正な競争を行い、消費者を守るための規制権限を持ちます。
- 多要素認証: アカウントのセキュリティを高めるため、パスワード以外に指紋やSMSなど複数の異なる要素を組み合わせて本人確認を行う仕組みです。
- GDPR(一般データ保護規則): EU(欧州連合)が定める、個人データの取り扱いに関する厳格なプライバシー規制。世界的な基準となり、企業に高いコンプライアンスを求めます。
今後の影響
もしFTCの命令撤回が認められれば、Xはより自由なデータ運用やビジネスモデルへの移行が可能となり、イノベーション促進につながる可能性があります。逆に、監視体制が維持されれば、マスク氏の経営活動や言論の自由度に制約がかかり続け、今後の事業展開に大きな影響を与えるでしょう。