科学的根拠なき「占星術」が愛され続ける理由:心理学的アプローチで分析
天体の位置や動きを個人の性質と結びつけるとされる「占星術」は、古代バビロニアに起源を持ち、ギリシア、インド、アラブなどを経てヨーロッパ、中国へと伝播し、歴史を通じて人々に求められ続けている。科学的根拠は一切見つかっていないにもかかわらず、なぜこれほどまでに人気を保っているのかについて、コーネル大学のグレン・C・アルトシュラー名誉教授が解説している。
占星術は元々紀元前3世紀頃にギリシアに伝わり、「ホロスコープ占星術」として発展した。かつて聖アウグスティヌスのような宗教的権威者からは異教の慣習として批判され、時には死刑に処されるなど、歴史的な抑圧を経験してきた経緯がある。しかし、20世紀初頭には「未来予測」から「性格分析と心理カウンセリング」へと方向転換し、再び絶大な人気を獲得した。
現代の市場規模は大きく成長しており、アルトシュラー氏が紹介する情報によると、占星術市場は2020年には128億ドル(約2兆円)であったが、2030年までには228億ドル(約3兆6000万円)に成長すると予測されている。一方で、科学的な反証も多数存在し、例えば相性分析や同一時間・場所での出生者間の性格比較では、占星術の影響は確認されていない。
にもかかわらず人気なのは、心理学的な要因が指摘されている。専門家によると、クライアントは分析結果から自分に当てはまる部分を見出しやすく(確証バイアス)、診断や理論を有効だと受け入れる傾向がある。また、懐疑的な人であっても、自身に関する好意的な報告を受けると占星術に対してより肯定的な態度になりやすいという心理的メカニズムが働いている。さらに、経験豊富な占星術師は、単なる知識だけでなく、共感的でドラマチックな振る舞いや、相談者から情報を引き出すコミュニケーション能力を駆使していることが指摘されている。
背景
占星術は古代バビロニア発祥とされる天文学的知識が起源であり、歴史を通じて文化や宗教的な文脈の中で変遷してきた。科学の発展に伴い、その根拠は否定されてきたものの、人間の「自己理解」や「運命への問い」という普遍的な心理ニーズを満たす疑似科学として現代でも需要が高い状況にある。
重要用語解説
- ホロスコープ占星術: 個人の誕生時の惑星・太陽・月の位置を地図上に描き出し、それに基づいてその人の性格や運勢を分析する占星術の手法。古代バビロニアから発展したとされる。
- 確証バイアス: 人は自分の既存の信念や仮説を支持する情報ばかりに注目し、それに反する情報を無視したり軽視したりする認知的な傾向のこと。占いなどで利用される心理的メカニズムの一つ。
- 疑似科学: 科学的な手法や検証を経ずに「科学的である」と見せかける知識体系や理論のこと。占星術がこれに分類され、科学的反証があるにもかかわらず信じられ続ける現象を指す。
今後の影響
このニュースは、現代社会における人間の心理的ニーズ(自己理解、運命への問い)の強さを浮き彫りにしている。占星術のような疑似科学の人気は、科学的な知識だけでは説明できない「物語」や「意味付け」を求める人間の本質的な欲求が根底にあることを示唆しており、今後のカウンセリングや心理学分野におけるアプローチの一助となる可能性がある。