「脱Excel」は困難か?給与計算の現場に残る手作業の構造的課題を調査
AIを活用した業務システムを手掛けるLayerXは、給与計算業務の効率化に関する実態調査の結果を発表しました。給与計算システムの導入が進んでいるにもかかわらず、現場では期待されたほど業務負荷の軽減が実現していない実態が明らかになりました。本調査は、給与計算業務に関わる担当者500名を対象に、2026年7月9日から10日にかけて実施されました。
調査の結果、給与計算システムとは別に、検算やデータ加工・管理のために「Microsoft Excel」などの表計算ソフトウェアを併用している業務が、回答者の86.6%という高い割合で残っていることが判明しました。Excelの具体的な用途としては、「給与計算システムの計算結果を検証する『検算Excel』」が45.0%で最も多く、次いで「異動などの変動情報を管理する『備忘録Excel』」が43.6%、「自治体別の住民税や履歴を管理する『住民税・変更履歴Excel』」が32.0%と続きました。
また、給与計算システムへのデータ反映プロセスにおいても、変更データを表計算ソフトウェアに別途蓄積し、手動で転記したりCSVファイルで一括取り込みを行うケースが36.4%と最多でした。さらに、給与計算結果の確定前チェックについても、システム内の確認のみで完結しているのは10.6%に留まり、残りの89.4%は人力によるチェックを実施しており、特に給与データと人事データをCSV出力し、検算Excelで照合する手法が67.1%と主流です。
LayerXは、こうした手作業が残る構造的な背景として、人事マスターや給与マスターといった重要なデータがシステム内で分離している点や、変更反映月の指定、過去履歴の保持が十分に行えないシステム設計が原因であると指摘しています。
背景
近年、企業のDX推進に伴い、給与計算業務を含むバックオフィス業務のシステム化が急速に進んでいます。しかし、多くの企業現場では、システム導入だけでは解決できない「データ連携の複雑さ」や「履歴管理の難しさ」が残っており、結果としてExcelを用いた手作業が不可避な状況が続いています。
重要用語解説
- 給与計算システム: 従業員の給与や諸手当を計算し、支払い処理を行うための専用業務システム。業務の自動化を目的として導入される。
- 検算Excel: 給与計算システムが出力したデータが正しいか、手動またはシステム連携データと照合し、誤りがないか検証するために利用される表計算ソフト。
- 人事マスター/給与マスター: 従業員の基本情報(氏名、所属、異動履歴など)や給与に関するルール(基本給、手当など)を一元管理する、人事・給与計算の根幹となるデータ群。
今後の影響
本調査結果は、単なる「手作業の残存」ではなく、システム設計上の「データ分離」や「履歴管理の欠陥」が原因であることを示唆しています。今後は、単なる機能追加ではなく、人事・給与データを統合的に管理し、過去の変更履歴を追跡できるような、より高度なマスターデータ管理機能を持つシステムへの移行が求められます。