ソニーとワーナーがAnthropicを提訴:AI「Claude」の学習データ利用に関する「史上最大知的財産窃盗事件」
大手音楽著作権管理会社であるソニー・ミュージックパブリッシング(SMP)とワーナーチャペルミュージック(WCM)が、AIモデル「Claude」の開発元Anthropicを共同で提訴しました。両社は、AnthropicがClaudeのトレーニングプロセスにおいて、著作権で保護された数万点に及ぶ楽曲を違法に収集・利用したと主張し、損害賠償を求めています。
提訴はカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所で行われ、SMPとWCMは、タミー・テレル&マーヴィン・ゲイの「Ain't No Mountain High Enough」や、マライア・キャリーの「All I Want for Christmas Is You」、テイラー・スウィフトの「Paper Rings」など、両社が著作権を保有する具体的な楽曲名を挙げています。彼らの主張の核心は、Anthropicがこれらの楽曲を違法に収集し、Claudeのトレーニングに利用しただけでなく、その出力データとして体系的に複数回複製した点にあります。
両社は、故意に侵害された作品1点につき最大15万ドル(約2400万円)、著作権管理情報を削除した事例1点につき最大2万5000ドル(約400万円)の法定損害賠償を求めています。対象作品点数が数万点に及ぶため、Anthropicが負う可能性のある損害賠償額は数十億ドル(数千億円)規模に達すると見られています。
この訴訟は、音楽業界とAI開発企業の間で起きている著作権侵害問題の深刻さを象徴しています。過去には、UMPGやコンコード・ミュージック・グループなどが2023年、および2026年には2万点以上の作品について30億ドル(約4800億円)を求める第2の訴訟を提起するなど、大手音楽会社が次々と法的措置を講じており、Anthropicは主要な大手音楽会社すべてと訴訟を構える状況となっています。
背景
近年、生成AIの急速な発展に伴い、AIモデルの学習データとして大量の著作物(音楽、文章、画像など)が利用されるケースが増加しました。これに対し、著作権を持つ権利者側から「無断利用による知的財産権の侵害」として、AI開発企業に対する訴訟が世界的に増加する傾向にあります。
重要用語解説
- Anthropic: AIモデル「Claude」の開発元企業。大規模言語モデル(LLM)を開発しており、本件では、そのトレーニングデータにおける著作権侵害の疑いで訴訟の相手方となっています。
- 著作権: 著作物(楽曲、文章など)の創作活動を行った人(著作者)に与えられる権利。本件では、音楽の利用がAIの学習や出力データに組み込まれた点が争点となっています。
- Claude: Anthropicが開発した大規模言語モデル(LLM)の名称。本件の訴訟において、著作権侵害の疑いがある「学習データ」および「出力データ」の主体となっています。
今後の影響
本件は、AI開発における「学習データ利用の適法性」という根源的な問題を浮き彫りにしました。今後、AI企業は著作権者からのライセンス供与を得るか、著作権法上の例外規定(フェアユースなど)の適用範囲を明確にする必要に迫られます。音楽業界にとっては、AI利用に関する新たな収益源や、厳格な権利管理システムの構築が求められるでしょう。