FTCと22州がAmazonを提訴:広告オークションの価格を水増しし3兆円超を過大請求した疑い
アメリカの連邦取引委員会(FTC)と22州の司法長官が合同で、Amazonを提訴しました。本件は、Amazonが自社の広告プラットフォームにおいて、広告主を欺瞞的に料金を操作し、7年以上にわたり200億ドル(約3兆2000億円)以上を不正に徴収していた可能性があるとして提起されたものです。
訴訟の焦点は、広告枠オークションの仕組みにあります。通常、広告オークションでは、次点入札額を基準とする「セカンドプライス方式(GSPオークション)」が用いられ、適正な価格での競争が期待されます。しかし、FTCによると、Amazonは2019年以降、予告なく「ソフトリザーブ」と呼ばれる非公開の追加料金を導入し、GSPオークションで決定された落札額よりも高い金額を広告主に支払わせていたとされています。訴状では、Amazonの幹部が「支払額は実際の入札者ではなく、Amazonが算出する架空の2位価格によって決定される」と発言した文書が引用され、Amazonが価格引き上げのために架空の参加者を利用していた可能性が指摘されています。
この不正な価格水増しは長期間にわたり隠蔽され、段階的に追加料金が引き上げられてきたとされています。特に「スポンサー製品」広告においては、広告主が落札額そのものを支払う割合が2021年の30〜40%から、2024年には約80%にまで増加したことが訴状で指摘されています。
Amazon側はこれに対し、「FTCの主張は明らかに誤り」と強く反論しています。同社は、広告コストはインフレ調整後も横ばいであり、コンバージョン率が伸びているため、広告主は同じ金額を支払いながらより大きな利益を得られたと主張しています。また、平均落札額は2019年から2025年の間に50%下落したことなど、広告の関連性の高さがユーザー体験を向上させている点を強調しています。
本訴訟には、アラスカ州、カリフォルニア州、ニューヨーク州を含む22州が加わり、Amazonが連邦および各州の消費者保護法に違反しているとして、民事罰と多額の損害賠償を求めています。
背景
本件は、巨大プラットフォーム企業が持つ市場支配力と、その内部の価格決定メカニズムの透明性に関する問題が根幹にあります。オンライン広告市場は複雑であり、広告主はプラットフォームのアルゴリズムやオークションの仕組みを完全に把握することが困難です。FTCは、Amazonがこの情報格差を利用し、広告主に対して不当な価格設定を行っていると主張しています。
重要用語解説
- 連邦取引委員会(FTC): アメリカ合衆国の連邦政府機関で、市場における公正な競争を監視し、消費者保護を目的としています。独占的または不公正なビジネス慣行を行う企業を提訴する権限を持っています。
- GSPオークション: Generalized Second-Price Auctionの略。広告オークションの一種で、落札価格を次点入札額よりわずかに高く設定する方式です。市場の適正価格を測る基準として一般的に用いられます。
- ソフトリザーブ: オークションにおいて、最低落札価格(最低入札額)を指す非公開の追加料金。通常、この価格が明示されないため、広告主が真の競争価格を把握しにくいという問題があります。
今後の影響
本訴訟がAmazonに有利に決着した場合、巨大プラットフォームの広告市場における価格決定の透明性がさらに低下する懸念があります。逆に、FTC側の主張が認められれば、オンライン広告オークションの仕組み全体の見直しや、プラットフォームの価格設定に関する規制強化が促され、今後のeコマース市場の構造的な変化を招く可能性があります。