CERN、加速器制御システムをRedHat系OSからDebianへ大規模移行計画を発表
欧州原子核研究機構(CERN)が、長年使用してきたRedHat系OS(RHELなど)から、Debianへの大規模なOS移行計画を推進していることが判明しました。この計画は、2026年8月29日から30日にスイスのヴィンタートゥールで開催された「MiniDebConf Winterthur 2026」において、CERNのエンジニアらによって明らかにされました。移行の主な対象は、加速器の制御に使用されている2,200台以上の組み込みシステムおよびコンピューターです。
これまでCERNでは、RHELをベースとした「Scientific Linux」やRHEL互換の「Cent OS」が主要なOSとして採用されてきました。しかし、RedHat系OSが使用するコンパイラフラグ「-march=x86-64-v2」が、古いCPUアーキテクチャの切り捨てにつながるという技術的な問題が発生したため、OSの移行を決断しました。この技術的な制約が、大規模なシステム刷新の引き金となったと見られます。
CERNは、この移行を2026年第4四半期までにDebian 13(コードネーム:Trixie)への移行を目標として進めています。なお、データセンターや実験コンピューティングといった主要な計算環境には、引き続きRHELやAlmaLinuxといった安定したディストリビューションが使用される予定であり、移行は主に制御システムに限定されています。この動きは、世界的な科学研究インフラにおけるOSの標準化と、オープンソースコミュニティの技術的進化を象徴する事例となっています。
背景
CERNは世界最高峰の科学研究施設であり、その巨大な加速器や実験設備は、高度に専門化されたコンピューティングシステムに依存しています。長年、安定性と信頼性の高さからRedHat系OSが採用されてきましたが、特定のコンパイラフラグの変更が、古い制御システムを動かすCPUアーキテクチャの互換性に技術的な課題を突きつけ、OSの根本的な見直しが必要となりました。
重要用語解説
- 欧州原子核研究機構(CERN): 世界最大級の粒子物理学研究施設。大型ハドロン衝突型加速器(LHC)を運営し、国際的な科学研究の最前線に立つ組織であり、そのインフラは高度な計算資源に依存しています。
- RedHat系OS: Red Hat Enterprise Linux(RHEL)を指す総称。エンタープライズレベルでの安定性と信頼性が高く、金融や政府機関など、ミッションクリティカルなシステムで広く採用されているLinuxディストリビューション群です。
- Debian 13 (Trixie): Debianプロジェクトが提供するLinuxディストリビューションのバージョン。オープンソースコミュニティで高い評価を得ており、CERNの今回の移行先として選定された、安定性と柔軟性を兼ね備えたOSです。
今後の影響
本件は、世界的な科学研究インフラにおけるOSの標準化とオープンソース化を加速させる可能性があります。制御システムがDebianへ移行することで、よりオープンで柔軟な技術スタックが採用され、長期的な保守コストの削減や、新しいハードウェアへの対応が容易になるなど、研究の継続性と効率性に大きな影響を与えることが予想されます。